<排泄の介助が必要になる時>
高齢犬の介護の中で最も工夫と配慮が必要になるのが排泄の問題です。
犬の習性から考えて、犬が自分の寝場所や居場所を無意識に排泄物で汚すことは考えられません。排泄は動物の基本本能であり、排泄についての習慣は高齢犬といえども完全に忘れ去ることはありません。
高齢犬が失禁したり決まった場所以外で排泄をするのはよくよくのことですので、飼い主は怒ったり当惑したりするのではなく「この問題を真剣に考えるべきときが来た」と認識を新たにするべきでしょう。時々失敗が見られる初期の段階では少なくとも犬は決められた排泄場所に向かおうとしたはずで、何かの事情でその移動が困難だったためにトイレ以外の場所を汚したと考えられます。
この段階での配慮のポイントは次の様なものです。
叱らない  
トイレの場所を工夫する  
時間を決めて排泄をすすめる

特に高齢犬の失禁に際しては「叱らない」ことが原則です。
介護者はトイレの位置を再考して、失敗させない工夫・失敗を少なくする工夫・更に失敗されても処理のしやすい工夫を行うことに努めます。

食事の後、寝覚めの後などにトイレに誘導して排泄を促すことも効果的です。
一般に、立ち上がることが困難になった高齢犬であっても、尿意や便意を覚えると自ら決められた排泄場所へ行こうとするものです。通常、犬に寝たきりの姿勢で排泄させるのは困難です。
そして散歩の途中で排泄する習慣があった犬は室内で排泄することに「罪悪感」をもっている場合も多い為、人の力によって排泄場所へ移動させ、人の手で体を支えてでも排泄を助けることが望ましいでしょう。

食事や散歩、排泄についての習慣は犬の基本的で重要な行動であり、可能な限り愛犬の意志に添って対応してあげたいものです。「排泄場所に連れていってもらえれば出来る」段階の犬に対して、オムツで対応しようというのは尚早です。
失禁や排尿回数が多いことを理由に、飲み水の制限をすることはあってはなりません。
排泄に人の介助が必要な段階に入ると、介護者の負担を軽減するための配慮も欠かせません。

介助のしやすい環境作り
食餌内容の工夫

トイレシーツを取り替えたり、排泄物を処理しやすいようトイレ回りの環境を整え、衛生状態を高度に維持するように努めなければなりません。汚れても簡単に掃除が出来るように工夫することも重要です。カーペット敷きの床よりもフローリングの方が掃除はしやすいです。

排泄の後には局所的にシャンプーをする必要が生じることも多く、長毛犬の場合には後躯、少なくとも肛門回りの被毛を短くカットするなど、生体を清潔に保つための工夫も必要です。

また、一般に運動量が減った高齢犬は便秘がちになります。食餌は繊維質の多いものを与え、重度の便秘には獣医師の指示のもと、整腸薬を投与することも考えます。
高齢犬とはいえ、無理のない範囲でわずかでも定期的に運動をさせることはあらゆる観点から望ましいです。

いよいよ排便ができなくなった愛犬の場合は、最終手段として肛門から指をさしこみ、直腸に溜まった便を掘り出す(摘便)ことが行われます。薄手のビニール手袋に滑りを良くするための石鹸水をつけ、肛門から指を入れて便を掘り出します。
この作業は指の爪を短く切って行うことが肝要で、腸壁に傷をつけることのないよう慎重に行わなければなりません。

オムツの使用
介護のための人手・時間がとれない場合にオムツを使うことは選択肢としては正当です。
しかしながらオムツは排泄物を包んで犬の体にくっつけている状態ですので、オムツを取り替え、体を清浄する手間は実は大変なものとなります。
オムツは「汚れを漏らさない」という介助者側のメリットを考えて作られたものです。多くの飼い主がオムツを使う前の段階でとどまり、人用・犬用の介護用品を駆使して排泄の介助をしているのが現状です。
排泄の度にできるだけ速く片付けることが人にも愛犬にも望ましいことは言うまでもありません。愛犬自身に残された力と飼い主の工夫を合わせることによって、一歩でも老化を遅らせようとする努力は尊いものです。

最終的な排泄介助
立っているのが難しくなれば介助をし排泄場所に誘導しますが、自力排尿排便が難しくなれば定期的に搾り出す必要があります。尿がすべて出きらずに膀胱に残っていると細菌が繁殖しやすくなり、膀胱炎になってしまうことがあるため出しきらなければなりません。
やり方についてはかかりつけの病院で指示を受けなければなりません。