<生体販売の難しさ>

「動物愛護」「ペット共生社会」といったキーワードが当たり前になった近年日本のペット業界で、ここ数十年、もっともスタイルを変えてこざるを得なかったのが生体販売業と言えます。
1970年代、子犬を購入するには街のペットショップに行き陳列を眺めるところから始めるしかありませんでした。1980年初頭、新聞や雑誌を主体とした生体の通信販売が広がりはじめ、話題を呼びました。1990年代、一般家庭へのパソコンの普及とインターネット通販の広がりにのり、子犬子猫のインターネット通販も劇的に進歩しました。同時にインターネット通販のフランチャイズ化もすすみ大手の生体ネット販売フランチャイズが生まれました。2000年代、ネット生体販売の問題点などが大きく取り上げられ、業界の通販業者全体への風当たりが強くなり始めます。2010年代、動物愛護の気運が一段とたかまり、「買うよりも保健所で引き取るべき」といった風潮が一部にでてきました。

<日本の捻れた動物愛護感覚>

世界的に「ペットショップの陳列で生体販売を行うのは(動物愛護の観点から)人道的ではない」というのは当然の流れと言えます。(もちろん良心的ショップもいるのですが)そして「インターネット通販で生体を売るなんて、これも言語道断である」というのも、理解はできます。(もちろん良心的業者もいるのですが)ただそれを欧米の感覚で言い切ってしまえるのは「それ以外のもっと理想的な生体を譲り受ける方法がある国だから」であるということを忘れてはいけません。現代の日本ではどうでしょうか?「インターネット通販で生体を売るなんて、言語道断である」だから「ちゃんとした店舗(ペットショップ)で生体は購入しましょう」というコトになっています。この流れ、「作られている」印象を消し去ることはできません。もちろんこれは一部業界団体の努力の賜物で、一般のお客様はよく分からないながらも何となくそれに乗っているのが現状といえます。

本当のペットの先進国で、生体をショップに陳列しているような国はどこもありません。それこそが世界のスタンダードです。そういった国には「しっかりとしたブリーダーから一般愛犬(愛猫)家が子犬子猫を譲り受ける」というスタイルが確立されています。業界の流れの大元、源流とも言える部分がそれだけクリアにハッキリしているからこそ、理想的なペットライフのスタイルがそこからスタートします。

日本にはまだそういった「ブリーダーから愛犬愛猫家へ」という道筋ができていません。むしろ、なかなかその道筋ができないようになっている。現状で生体販売で潤っている業界が、こんな美味しいビジネスをそうそう簡単に手放すわけはないのです。これは「愛護」とか「倫理」とか「信念」といった次元の話ではなく、もっと「経済的な」「政治的な」ハナシなのです。

<これからの生体販売とは>

ではこれから「生体販売」を目指す場合、どのようなスタイルをとれば良いのでしょうか。ここで決める「スタイル」と「ポリシー」が生体販売業の成功を左右するポイントとなるでしょう。難しいことですが、「何のために生体販売を目指すのか」を真摯にまずご自分の胸に問いかける必要があります。

ザックリ分けて、生体販売のスタイルは下の幾つかに分けることができます

A1・仕入れた生体を販売(店舗で陳列)
A2・仕入れた生体を販売(WEB上で写真展示)
B1・仕入れずに予約販売のみ(店舗 or WEB)
B2・仕入れずに予約販売のみ(WEB上で写真展示)
C・ブリーダー紹介・生体譲渡の仲介のみ
D・自分がブリーダーとして直販する

ご自身の環境と目指すものによってスタイルは自ずと決まってきます。まずどのスタイルで、どの程度の収益を目指すのかをイメージしましょう。
私たちは「ペットビジネス」を手がけているわけですから「オカネのためである」というコト自体は悪いコトではありません。しかしそれだけでは当然上手くいきません。

1・どんな人のために
2・どんな生体を
3・どんな方から仕入れて
4・どんなスタイルで
5・どれくらいの価格で(どれくらい儲けて)売って
6・どんな風に引き渡し
7・どんなアフターサービスをしたいのか

この7つをクリアにすることから始めましょう。