<ペット介護の需要はのびています>

獣医医療の発達と共に犬の寿命も延び、高齢犬が増えています。
更にペットブームも加速の一歩をたどっており、このままいくとますます高齢犬が増加することは確実です。
ある調査によると2008年度では犬の飼育数のうち7歳以上の犬が55%を占め、10歳以上の犬は29.%という結果が出ています。
老犬介護生活を送るお宅も今や少なくありません。犬の世界でも着実に高齢化が進んでいます。
以前は死因の原因であったフィラリアで死亡することがなくなり、下記に記したように、ペットを取り巻く環境の変化、獣医医療の進歩などによってペットの寿命が格段に伸びました。

<ペット高齢化の要因>

・室内飼育の普及
ペットの社会的な地位が向上し、ペットの飼育が室内で飼育されるようになったため、気候や温度差などのストレスから解放された。
蚊にさされる機会がなくなり、フィラリア症に感染する機会が少なくなった。
・栄養状態の改善
ペットフードの普及が高くなり、ペットフードの質の向上のよって、ペットの栄養状態が良好に保たれ、栄養不良が原因となる疾患に陥るペットが少なくなった。
療養食や年齢別フード、オーガニック食なども選択できるようになり体質にあった食事を摂取できるようになった。
・予防医学の発達と普及
多くの病気がワクチンで予防されるようになり、飼い主の意識が高くなり接種率が向上した事によりジステンパーやパルボウイルス感染症で死ぬ犬が少なくなった。
飼育者がペットの健康管理に関する高度な知識を持ち、実践するようになった為、内部、外部寄生虫の感染の機会が減り拡散されなくなった点も大きい。
・去勢・避妊手術の普及
虚勢、不妊手術をするペットが増加し、雌では卵巣、乳腺、子宮などの病気に罹る率が低下した。
・動物医療の高度化
検査機器、診断技術などの動物医療の進歩により、病気の早期発見が可能になり、かつては治療が困難とされた病気から回復する例が多くなった。
近年になって「お金はいくらでもかかってもよいので、この犬の命を助けたい。」という愛犬家の願いを叶えるかたちで近年の動物医療は飛躍的に伸びた。

<ペットの介護の現状>

ペットの寿命はこの先も伸び続けると考えられます。
ペットの介護は特別なケースではなくなり、すべての飼育者が直面する問題となると言っても大げさではありません。
基本的に飼育者が自分のペットの介護にあたる事になりますが、飼育者が仕事を持っている場合の時間的問題、飼育者が高齢である場合の体力的問題などから訪問介護に依頼するケースも増えてきます。多くの飼育者はペットと過ごした時間は長くても、体力の衰えたペットの介護経験を持つ事は稀で、寝たきりのペットをどのように介護すべきか悩むものです。
介護に体力と時間が思った以上にかかり、その重労働に飼い主が悲鳴をあげてしまうケースも少なくありません。
ここでようやく「要介護」で「お手伝い」が必要な状態になったと気付くのです。
栄養、衛生を中心とした専門知識と介護実務の高度な経験をもった介護士は今後必要とされる事は間違いありません。
介護士の支えによって、ペット達の介護の苦痛を和らげると共に、飼い主の体力的、精神的な困難にも対応していくことができれば、今後のペット高齢化社会のより良い姿が見えてくるのではないでしょうか。

<介護の心得>

ペットの介護は、本来そのペットの飼い主の手で行われるべきものですが、飼い主が高齢化しているケースも多く、他の人の手を借りて介護にあたる事も多くなってきています。この場合「飼い主が行う介護以上の介護はできない」と言うことを、飼い主自身が一番強く認識すると言われています。 
「飼い主から依頼された範囲の作業に最善を尽くす」と言う介護士の立場は終始明確にするべきです。
「飼い主が愛犬、愛猫にしてやりたいと考えていることを、飼い主様に代わって行う」というのが介護士の立場であり役目あるということです。仮に介護士が「より望ましい介護の方法がある」と感じた場合でも、飼い主に助言・提案することは良いですが、介護士が独断で実行するようなことはあってはいけません。 
飼い主とペットの間に長年かけて育まれてきた領域に介護士が介入する場合には、充分な時間をかけ説明するとともに細心の配慮をもって接しなければなりません。
世間の多くの人が支持する手法ではあっても、ある飼い主には受け入れられないと言うことがあって当然です。ペットに対しあくまで「主」たる飼い主に対し、「従」たる立場で最善を尽くす姿勢がいつの場合も肝要となります。
介護の方針については常に飼育者の意向を確認すると言う手順を忘れてはならず、 飼育者と介護士の間の信頼関係が構築されなくては、介護作業は円滑に行うことができないのです。

<介護士ビジネスの未来>

ペット介護士は時間や金銭的・精神的負担により老犬介護に疲れた飼い主のストレスを少しでも回避する役割も担います。
言い換えればそこにここからのビジネスチャンスがあると言っても間違いありません。
これから増える老犬老猫に充実した余生をすごさせてあげられること、また飼い主に自分の手元でペットの最期をみとることのできることの素晴らしさを知ってもらうこと、介護士の提供できるこの意義は何者にも代えがたいものです。
ペット介護の歴史はまだ始まったばかりです。来たる老犬老猫総介護時代に、充分な介護経験を積んだ介護士は貴重な存在となっていくことでしょう。
培った経験を元に、介護サービスの上にペットロスのカウンセリングなども盛り込み、飼い主の心のサポートをしていくことができれば、今後のペット共生社会もより良いものになっていくに違いありません。
お客様にもペットにも無理をさせず皆のクオリティオブライフを上げて行くことができれば、今後ペット介護シッターがますます認知され、社会的地位もあがっていくでしょう。